新時代の幕開け

  

霧が晴れた。ここ数ヶ月、何をするにもしっくりこなくて、かと言って何もしないわけにもいかないから、仕方なく「本来の自分ならきっとこれをしたいはず」と思うことを、手当たり次第にやってみては面白みを感じられずに落ち込むということを繰り返していた。でも今は違う。心と体がひとつになって、全身に血が駆けめぐっている。ウルトラセブンメトロン星人が夕日を背に対峙するカットを見て、美しいと感じられる(実相寺昭雄という監督を最近知った)。『宇宙大戦争マーチ』を聴いて、お国のために命を賭して戦いたいという気持ちが湧いてくる(別にそういう曲ではない)。吉岡里帆がテレビに映れば、今すぐプロポーズしたくなる(この表現は何重ものオブラートで包んだ)。これは王の帰還である。僕の心の主たるこの僕が、己が心の玉座に腰を据えたのだ。体内みなぎるこの万能感が、どうか3時間前に飲んだレッドブルと深夜テンションがもたらした錯覚ではないことを祈りつつ、今チキンラーメンにお湯を注ぐ。